2013年12月17日火曜日

ユニオンショップと御用組合

前回の記事で、働組合は、労働者のためにあるわけではない と言いました。

そのいい例が、ユニオンショップの労働組合です。

ユニオンショップ協定とは、本採用時に、従業員は、労働組合に加入しなければならず労働組合を脱退した、または、除名された従業員を会社は解雇しなければならないという、労働組合と会社との間で締結される協定のことを言います。

大方の場合、その労働組合は、企業内組合ですから、さしずめ、入学すると、自動的に、生徒会の会員になるのと同じようなものです。

すごーく簡単にいうと、労働組合強制加入制度です。
(実は、似たような仕組みで、クローズドショップという制度もあるのですが、ここでは触れません)
日本では、特に大企業を中心に、このユニオンショップを採っている会社が多いようです。

*******ユニオンショップについて、もう少し知りたい人は、こちら

さて、皆さんは、このユニオンショップ協定って、どうおもいますか?

労働組合って、労働者のためのものでしょ?要するに、権利なんでしょ?
強制的に入れさせられるって変じゃね?

そう思った方いませんか?

労働組合加入は、任意であるべきだと。

ここで、少し、難しい話

わが国で一番、強い効力を持っている法律は?…憲法ですよね?日本国憲法

その日本国憲法には、表現の自由とともに、集会結社の自由、要するに団体を作って集まる権利というのが規定され、保障されています(21条1項)。

で、この権利の消極的な権利として、「団体を作らない、集まらない、入らない」自由(非加入の自由)というのも保障されているとされています。

そうすると、このユニオンショップ協定は、非加入の自由を保障した憲法21条1項に違反するジャン?

って、早とちりしない、早とちりしない。

実は、そうではないのです。

憲法の規定は、国家や地方公共団体といった権力にたいする一般国民の権利関係を規定する法律であって、国民同士、たとえば、企業と従業員や、今回のような労働組合と組合員といった、私人間の事柄には、原則として(ここがミソ)、直接適用されないのです。

とはいっても、一市民にとって、企業、特に、国家権力と同じような影響を持つこともあるでしょう。そうした場合、国家対国民の関係にないからと言って、憲法の規定を無視するようなことが、横行したらどうでしょう?事実上、一市民の権利はないがしろにされてしまうと思いませんか?

そこで、民間同士のことを規定する法律、民法の一般条項という規定を持ち出して(1条とか90条)その規定を適用する際に、この憲法の理念を解釈でもりこんで、解決を図ろうというのが、間接適用説と呼ばれる学説なのです。

という事を、もっときちんと勉強したい人は、中央大学法学部法律学科通信教育課程に行きましょう((笑)って、なんで私が宣伝しているんだ?

で、話がすごくややこしくなりましたが、
ユニオンショップ協定は、憲法21条1項で消極的に認められている非加入の自由という理念に反し民法で言う、権利の乱用の禁止(1条)、または、公序良俗に反する(90条)のではないですか?

ということが、かつて最高裁判所で争われたことがあるのです。昭和20年代の話ですけど。

で、結論は?


ユニオンショップ協定は、有効であると。

なぜか?

先ほど、憲法の規定は、私人間では原則直接適用されないと言いましたが、例外的に、直接適用される条文があるのです。

その一つに、28条があります。

第二十八条  勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

その昭和20年代に出された最高裁判所の判例では、憲法が国民の間で直接適用されるべくわざわざ規定した28条にもとづく労働組合団結の利益は、非加入の自由に優先されるとの見解で、ユニオンショップを有効だとしたのです。

ざっくりと説明しているので、詳しいこと、もっと正確に知りたい人は、どうぞご自分で勉強してください。私が話したいのは、この部分ではないので先に進みます。


ようするに、労働組合強制加入制度のユニオンショップ協定は、有効だというわけですが、やはり問題も多いのです。

ユニオンショップの問題について、うまくまとまっているのが、こちらの記述
 
 
 
 
 こちらのリンク先に出ている西谷敏先生は、ユニオンショップに批判的な学者として有名な方です。

でも、その労組の記事より、早くまとめていた人がいるのです。

「ユニオンショップの適法性について」1999年3月中央大学法学部通信教育課程卒業論文

ハイ、これ書いたのは私です((笑)。公開してもいいのですが、まぁ、やめておきましょう。

さて、突然ですが…

**********************************************
あなたは、50頭のサルの飼育係になりました。
貴方は、このサルたちを手なずけなければなりません。
さぁどうしますか?
**********************************************

1頭1頭手なずけますか?

普通はそんなことしませんよね?

サルは、群れを成して行動する動物です。
そして、その群れには、ボスがいます。

そのボスを押さえてしまえば、とりあえず、その50頭は掌握可能ですよね。
逆に、そのボスが言うこと聞かなかったら大変ですけれども。

ユニオンショップも同じなのです。
経営側が、労働組合の代表者を手なずけてしまえば、それでおしまいです。

では、どうやって?

専従と言われる労働組合のことだけをやっている従業員であっても、組合長、支部長といった組合内でのポストに、永久についているわけではありません。よほど変な労働組合でない限り任期があります。

任期終了で、労働組合から離れたところで、職位を上げるという餌を与えて手なずけるわけです。
「人をまとめる管理能力がある」とか「リーダーシップがある」とか言って。

出世したい人、または、こういうルートでなければ、到底出世できないような人が、労働組合の世話を焼いているなんて会社ありませんか?

かくいう私も某社の正社員だったときは(まだ堅気だったときは)、当時の次長から、強く勧められましたけどね。「自分のために、組合の仕事をやれ」と
もちろん「いやです」と言って、断りましたが、(退職したのは、そのウンか月後でしたが、(笑))

ユニオンショップの会社では、労働組合が御用組合化している事が多いのは、そもそも、そういう使われ方をしているからです。

要するに、ユニオンショップは、会社と組合幹部(労働貴族)のための協定であって、決して労働者のための協定ではないのです。

という切り口から、私の卒業論文は、20年代に出された判例は、現代に適合していないという結論にしていたような気が…。

もっとも、すべてがすべて、ユニオンショップの労働組合が問題を抱えているというわけでもないでしょう。

ですが、問題のない労働組合なら、何もユニオンショップにしなくても、オープンショップ(労働組合の加入が任意となっているところのこと)で構わないと思うのですが、皆さんは、どう思いますか?

つづく

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